一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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 ふわり。  彼は重力を感じさせない身のこなしで、ハンモックから飛び下りる。おかげで、改めて彼の身なりを確認できた。  喫茶店のマスターのような、清潔な白いシャツに黒のベスト。それをモデルのように着こなしている。  首にはループタイを下げていた。タイの紐は上品なダークグリーン、そして飾りは、繊細な金細工のどんぐりだった。  彼の胸もとで光るどんぐりを目にしたとき、帆影はどきりとした。思わず、自分の胸もとに下がっている木の実のペンダントを、服の上から握る。  あの人のことを思い出してしまう──熱田神宮で出会った、顔も分からない、きれいな神様。
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