一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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(なんだこの人、ずけずけと……! 俺の体調のことなんか訊いたって、おもしろくないだろ! ていうか、店員なのに客に敬語使わないの失礼じゃないか?)  土足でこちらの領域に踏み込んでくる青年にいらっとして、反論しようとしたとき。  彼が、急に真顔になった。 「なら──命に関わる病気か?」 「え?」  様変わりした彼の表情に、帆影は面喰う。 「……いや、そんなことはない、が……」  そう答えると、翡翠の瞳が、晴れ間に輝く森のようにやわらかくなった。 「そう。なら、ひとまずよかった」  細められた二対の翡翠に、完全に毒気を抜かれてしまう。そして、冷静になってようやく思い当たった。 (……もしかして心配、してくれてたのか?)  ずけずけとした物言いで、気づかなかったけど。
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