一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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 不意に、青年はかがんで、床に落ちた何かをつまみ上げた──先ほど帆影が拾った、桜の花びらだ。  カウンターに移動した彼は、ガラスの器に水を張り、花のひとひらをそっと浮かべる。  傷ついていた花びらはうるおい、水に癒され、透明になって安らいだ。 「ほら、ぼうっと突っ立ってるくらいなら、座ったらどうかな。ぶっ倒れてもらっても困るしね」  彼はそう言って、帆影をカウンター席へとうながした。
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