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「まあ、俺は寛大だからね。今日は特別に、ご馳走してやろうかな」
「い、いや、さすがにそれは悪い……」
「おい、人の厚意は黙って受け取っておけ。イングランドの人間としては、紅茶を勧めたいところだけど。今のお前にはハーブティーが良さそうかな」
「あんたイギリス人なのか?」
相手が遠慮のない話し方をするので、帆影も敬語を使わなくていいか、という気になってきてしまった。
「イングランドと言ってくれるかな。──まあ、あえて言うならロンドン生まれ、日本育ち、ってところかな」
そう話しながら青年は、ころんとしたガラスのポットに茶葉とお湯を入れ、蓋をする。
次に彼は、小さな砂時計をテーブルに置いた。妖精の光る粉を集めて作ったような砂時計だ。
さらさらと金色の砂が落ちる。それに呼応するように、透明なポットの中で茶葉が開き、お湯が黄金色に染まっていく。
ふんわりと、甘くさわやかな香りが漂ってきた。
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