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(この香りはレモン……? なんかリンゴに似た、甘い匂いもする)
帆影が心地よい香りの中をたゆたっていると、やがて砂の最後の一粒が落ちきった。青年は流れるような所作で、ガラスのカップにお茶をそそぐ。
「お待たせしました。レモンマートルとカモミールのブレンドティーだよ」
どうぞ、と差し出されたハーブティーを、帆影は興味津々に見つめた。
「きれい……蜂蜜みたいな金色だ」
あの心地よい香りが湯気になって、より濃く立ち上る。
「……いただきます」
帆影は、ガラスのカップにそっと唇を寄せた。一口飲むと、甘酸っぱく優しい風味が香りと共に広がる。ほ……と自然に息がこぼれた。
あたたかくて、強張っていた心と体がほぐれていく。まるで、大きな白い翼に抱かれて、穏やかな休息の時を与えられているような。
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