二章 不思議の国のアリス

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 言い淀んで、来夢はうつむいた。  しっかりと弧を描いていた眉が歪む。膝に置いた両手にぎゅうっと力が込められて、プリーツのスカートがぐしゃぐしゃになってしまった。  来夢は、桜色の唇を噛みしめたまま。  ピートは凪いだ水面のように穏やかに、少女の言葉を待っている。  そんな二人の様子を眺めながら、帆影は考えに耽っていた。 (絵本からアリスがいなくなる──本当にそんなことがあるだろうか……?)  来夢は心の底から思い悩み、ここへ来たのだろう。そんな子が嘘をつくとは思えない。彼女は絵本からアリスが抜け出したと、本気で信じている。 (でもなあ……)  普通の大人なら、全てはこの少女の思い込みや妄想で、彼女の見た夢も偶然の産物だと言って、片づけてしまうだろう。
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