一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

 本宮帆影、十六歳は、病弱である。  身も蓋もない言い方だが、実際にそうなのだから仕方ない。  命に関わる大病という訳ではない。ただ、中三という受験期まっただ中の時期に、とある病気になったことをきっかけに、すっかり虚弱体質になってしまった。  どうにか根性で成績を維持し、今年の春、無事に高校に入学できたのは、よかったのだけど。 「今日も行けなかったな、学校」  ベッドの上で、ぽつり、と帆影は空虚につぶやいた。  急な環境の変化に、弱っていた体は耐えられなかったらしい。  もともと低血圧なこともあり、朝は頭が割れそうなほどの頭痛に襲われて、起き上がることすらままならない。  四月初めは、意地と根性でなんとか学校に行っていた。でも、そんなものは長くはもたなかった。  今は毎日、遅刻や早退、休みをくり返している。ここ数日は、学校を休んでしまうことが増えていた。 「もう四月後半、か」  つぶやいて、むなしくなる。  このまま春が過ぎ、夏も過ぎて、あっという間にさびしい秋になってしまうのだろうか。
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