一章 フェアリーテイル・ディテクティブ

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 * * *  頭痛が一番ひどいのは、朝起きたとき。そして午前いっぱいだ。  ひどい時は一日中頭痛に悩まされるのだけど、大抵、午後に近づくにつれて収まっていく。  ようやく起き上がることができた帆影は、一応、制服のシャツとパンツに着がえた。 (学校に行けなくても、せめて制服はきちんと身につけよう)  シャツの上には私服のパーカーをはおり、フードを深くかぶる。  最後に、どんぐりのペンダントを胸もとに下げ、シャツの中に落とし込む。そして、まだだるい体を叱咤して部屋を出た。  帆影の家は、名古屋で洋菓子喫茶を営んでいる。昭和創業のクラシカルな喫茶店だ。今は亡き帆影の祖父、本宮(もとみや)影虎(かげとら)が開いたという。  小さなビルの一階がお店。二階から上が、帆影たち家族が暮らしている家だった。  帆影は階段を降りる。  とん、とん、と一段ずつ降りるたび、珈琲の芳しい香りが近く、濃くなっていく。この香りを嗅ぐと、呼吸が少し楽になる。
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