持て余す青

４

　野球の守備で、一番やってはいけないことがある。それはめちゃくちゃにダサくて、カッコ悪くて、消えたいくらいに恥ずかしい。

　打球が股の間を抜けていく、トンネル。

　それをやってしまうのは、飛んできたボールにびびって、腰が浮いている証拠。どんだけ速い球が飛んできても、腰を下ろして、取れなかったとしても、絶対に自分の体に当てなければならない。後ろに逸らすことは、許されない。

　サードは楽でいいよな、といつも思っていた。高校野球ではさすがに違うのかもしれないが、中学野球では、サードはなりふり構わず、ボールが飛んで来たらとにかく前に突っ込めばいい。ボールを捕り損ねても、ナイスファイト、ドンマイ、とチームメイトに励まされる、そういうある意味ムードメーカー的ポジション。

　ショートは違う。サードより後ろからグラウンドを見ている分、状況を見て動く。サードの捕りこぼしたボールをカバーするのも、ショートの、大和の役割だった。

　中途半端に、体に当てんなよ。ボールの軌道が遅くなって、俺が拾って一塁に投げたところで、間に合わないじゃねぇかよ。

　中学最後の、大会だった。

　お前、邪魔だよ。俺が全部捕るから、お前、無鉄砲に飛び込むなよ。

　俺だったら、弾かずにきちんとミットに収められるのに。

　俺だったら。俺だったら。

　試合中、ずっと苛々していた。

　チームの誰よりも上手かった。練習の時だって滅多にミスしなかったのに、まっすぐにショートの正面に飛んできたボール。その日、大和は僅かに盛り上がった地面の影響でショーバンに変わったボールにびびって、腰を浮かせてしまった。

　大和の股の間を、あっという間にボールが抜けて行った。