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[鬼王]
「この鬼の名は浮鬼(うわき)、この世の全てになれる鬼だ。」
そう鬼王が言うと、浮鬼は炎を纏った巨大な火炎剣に姿を変え私を剣の側面で殴り飛ばす。血塗れに吹き飛ばされた私は、後衛の方々に何とか受け止めてもらい、体がぐしゃぐしゃになることを回避した。
「グシャリ」と音が聞こえた。朦朧とした視界に頑張ってその場を映すと、そこには内臓が潰れに潰れこぼれ落ちた鬼王がいた。石橋さんが泣きそうにも嬉しそうにもみえる顔でこちらを見てウィンクした。まるで「私が魔法を使って内臓潰しました!」と言わんばかりの顔で。
だが鬼の王とある者、そう甘く無い。浮鬼が鬼王の体に入り込み、臓器の形になり、鬼王の開いた肋骨の中でドクドクと動き始めた。鬼王はニヤつきながら徐々に体調を戻してきた。
勝った。
勝った。
そう思った。
そう願った。
そうであって欲しかった。
だが願いは無残にも散っていった。
その時、彼は帰って来た。
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