小さな世界、大きな島

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「やる気が無いなら帰っていい」 社会人になり数年が経過した。 大人になってこんなことを言われる日が来るなんて思ってもみなかった。 小学生の頃、スポーツ少年団でバレーボールをしていた時を思い出す。女性の監督で、とにかく厳しかった。やる気が無いなら帰れ、と何度言われただろうか。しかし、まだ心も精神も成長真っ只中で、素直だった小学生の私は、熱血スポーツ漫画のお手本のように彼女に縋り付きながら、やる気があります、バレーをやらせて下さい、と何度も大きな声で言うのだ。そこまでしてバレーボールがしたかったのかと言われたら正直よく分からない。しかし、少しでも好きだと言う気持ちがあったから、わざわざスポーツ少年団に入ってバレーボールをやっていたのだ。 けれども、仕事は違う。 好きでは無いし、どちらかと言うと嫌いだ。 生きるために仕方なくやっている。 だから、帰りますと言った。 午前11時半、普通のサラリーマンなら帰るはずのない時間に帰った。 ちらりと伺った上司の顔は驚きの表情に満ちていた。帰れ、と言ったのはそっちだろうに。
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