小さな世界、大きな島

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石垣島は、ビーチというより港、というのが素直な感想。とにかく船がいっぱい止まっている。ビーチで一日中ごろごろしてみたい、なんて思っていたが、それは少し石垣島には合わない遊び方かもしれない。港をぐるぐる散歩していると、大きく海保と書いた立派な船が何隻も並んでいるのを見つけた。船なんて興味がなかったが、その時はかっこいい、と思って写真を撮った。初日は港のあたりをひたすらぐるぐる散歩した。ずっと海の近くにいたのに、体がべたべたしないし、まったく磯臭く無かった。たまらなく不思議だった。仕事で江ノ島に行った時のことを思い出した。半日いただけなのに体がべたべたしたし、磯臭くなった。夏休みに海水浴に行った三浦海岸も、ちょっと潜っただけで髪の毛がゴワゴワした。本当にあの海は石垣島の海と繋がっているのか、信じられない。 何をしようか、なんて考える暇なしに来たから予定はない。しかし、時間はある。 溜まりに溜まった有給を消化しなければならないので、向こう1ヶ月は働いていないのに給料がある。あと、使う暇が無くて逆に貯まった貯金。帰りの飛行機もまだとっていないし、いつ帰るかなんて決めていない。しばらくは充分遊べるはずだ。 初日は空港に着いてから港街に移動し、散歩して夜になった。そばの店に入りひとりでカウンターに座り、ソーキそばと泡盛3種類ほどそれぞれ1合ずつ注文した。 ソーキそばを食べていると、大学卒業のタイミングで行った沖縄を思い出す。部活の仲間たちと本島に行った6泊7日の卒業旅行。人生で1番楽しかった1週間と言って良いくらい楽しかった。初めて行った沖縄は全てが新鮮で、全てが綺麗だった。大学4年生の春休みなので行ったのは2月だったが、興奮のあまりみんなで海に飛び込んだ。馬鹿だなあ、と思ったが、今ではその馬鹿やったことも良い思い出だ。お金は無かったが時間があった学生時代に戻りたいと、何度も何度も思った。 今ひとりでしっぽりと飲む泡盛は、卒業旅行中にみんなで浴びるように飲んだ泡盛より数段良いもののはずなのに、思い出の味には敵わなかった。
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