1/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

 セミは、秋を急かしたくなくて、私の見えない遠くへ飛んだと気づいた。  頬杖をつきながら窓の外を眺める。野球部が走っているのが見えて、こんな暑さの中大変だと思う。テニスコートの方からはテニス部の掛け声が聴こえる。ファイトファイト。天気は快晴。雲がまばらに散らばっている。今日は夕立にならないといいな。昨日は帰る時に直撃してしまって大変な思いをしたから。 「ゆずっ」  目の前でパチン、と手を叩かれて、やっと我に返った。 「もう大丈夫? 熱でもあるの? ぼーっとして」  本当に心配そうに、ミコが身を乗りだして私に声をかけてくれる。ミコと一緒に勉強している最中だったということを思い出す。 「大丈夫だよ」  ならいいんだけど、となおも困り眉で心配そうにしながら、私の目の前の席に体を戻した。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!