光へ

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 僕は、旅館の入口の外につるされている紫色のむき出しの電灯、おそらく虫除けであろうそれに虫が集まり、突っ込んでいって、地面に落ちていくのを眺めていた。  虫は馬鹿だなあ。そんなところに突っこんだら、電気を食らうに決まっているのに。   「あら、誠ちゃん。こんなところにいたの?」 「うん。虫を見てたんだ。ママ、あれって虫除けかな?」 「そんなことより今日のお勉強まだ終わっていないでしょう? 明日出かけるためにも、今日の分は終わらせないと。」 「終わらせたら、明日はダムを見に行けるんだよね。」 「終わらせたら、ね。いい? 誠ちゃんはいっぱい勉強をして、良い学校に入って、パパの院を継ぐのよ。」 「うん。わかった。」  もし、ママが僕にして欲しいって言ってることを僕が全部し尽くしたら、ママはどんな顔で笑ってくれるのかな。  僕は、光を見ている。
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