帰国した元彼は××

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ストリートピアノの演奏。 思い出のクラシック音楽。 プロポーズされた満月の夜。 どれも幸せな思い出ばかりだった。 オフィス街にあるビルの3階に私、秋元(あきもと)英玲奈(えれな)が勤める内科クリニックがある。 そこに今日、元恋人の五月女冬馬(さつきめとうま)が来院した。 「インフルエンザの予防接種をお願いしたいんですけど」 もう会うことがないと思っていた相手に会って驚いて受付で固まっていると、事情を知っている同じく受付の山田(やまだ)結衣(ゆい)がフォローしてくれた。 「保険証と診察券はお持ちですか?」 「すみません、診察券は失くました」 「では作り直しますね。期間が空いているので問診票とインフルエンザ予防接種の予診票をお書きになってお待ちください」 私から結衣に視線を移して保険証を渡すと、問診票と予診票を挟んだバインダーを受け取って待合室の空いているソファーに彼が座る。
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