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一緒に出てきた結衣は気を利かせたのかそそくさと「じゃあお疲れさま!」とニヤニヤしながら帰って行き、私は彼が私を待っているのかも分からなかったけどとりあえず「体調はもう大丈夫ですか?」と声を掛けた。
「点滴してもらってあの後だいぶ楽になりました」
「良かったです」
先生の診察によると彼の嘔吐は風邪からくるものだったらしく、点滴が終わった後薬を出して帰宅してもらった。
その後の会話が続かなくて“じゃあ”と言おうとすると「この後予定がなければご飯でも行きませんか?」と誘われ、迷ったものの「はい」と答えた。
はいと答えたのは彼のことが気になっていたからではなく、ただ単に断れない性格なだけだった。
イタリアンで食事をしながら、彼曰くあの日嫌な顔せず汚物を処理してくれたのが好印象で迷惑なのを承知でビルの前で待っていたらしい。
クリニックで働いていると健康な人は来ないし、居酒屋さんでバイト経験があると特にめずらしくないことだと言うと、それでも嫌な顔一つせず片付けてくれて良い人だと思ったと笑った。
それから何度か食事を重ねトントン拍子で付き合うことになり、付き合って2年を迎える頃別れるまで楽しい思い出ばかりが増えていった。
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