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「冬馬は…良いわよね。私が離婚に応じれば次の相手がいて幸せになれるんだもの。私だって異性を好きになれれば良かった。そしたらこんな風にずっと他人とは違うって気づいた時から今まで悩んだりすることなかったのに。今更離婚してパパを悲しませるなんて嫌よ」
ポロポロと泣き出す華に、テーブルに備え付けられているペーパーナプキンを何枚か差し出すことしか出来なかった。
それを受け取って「何これガサガサ!」と言って自分のハンカチを取り出し涙を拭く彼女が泣き止むのをただ黙って見てるしかなかった。
俺だって、俺にできることなら力になりたい。
慣れない海外生活で、華は会社関係以外で初めて仲良くなった日本人だったし彼女の奔放な性格に幾度も支えてもらった。
日本のLGBT(セクシュアルマイノリティ)の割合は左利きの人やAB型の人と同じくらいだそうだ。
それなのに華以外、今まで一度も出会わなかったのは周りにカミングアウトしている人が少ないからだと思う。
華が会って間もない俺に打ち明けたのはそこまで親しくなかったからで、親しければ親しいほど、関係性が崩れるんじゃないかと言えなくなる人が多いんじゃないか?と考えれば考えるほど苦しくなった。
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