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「ねぇもし今日来た五月女さんが幽霊だったらどうする?海外で不慮の事故で亡くなったんだけど英玲奈のことが忘れられなくて会いに来たの!」
「余計怖いよ!」
そうやってお酒を飲みながら笑い合ったら今日のことが何でもないように思えた。
本当にうちのクリニックが場所的に好都合で予防接種に来たのかもしれない。
酔ってふわふわした気分で結衣と別れて最寄り駅で電車を降りると、あの曲が聞こえて階段を駆け下りた。
もしかしたら…なんてあるわけないのに。
駅を出ると視界にグランドピアノとスーツ姿の男性が目に入って、確実に見覚えがある人物だった。
「冬馬?」
私の呼び声に気付いた彼が振り返る。
こちらまで歩いてくると私の顔が赤いのかお酒臭いのか「おかえり。酒飲んでる?」と言われ、少し恥ずかしかった。
「ちょっとだけ…」
「久しぶりにこの駅で降りたよ。あのおじいさんまだたまにここで弾いてるのか?」
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