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気に入りませんか?誰が見ても明らかな殺人事件ではないかとお思いでしょうね。
じゃあ何故村人や官憲が何も言わず事故と判断したのか。斎藤の死体をさっさと山に埋めてしまったのか。奥様の体は医者は見ていない。旦那様の取調べすらもなかったですね。
戦争中だから?検死する医者がいなかったから?中央との警察機能が上手く働かなかったから?それとも田舎の人間は学がないから殺人かどうかも分からなかったから?
そこはね。やはり大沢だからですよ。
私の簪と同じですよ。事件の共犯になる事で、彼らもまた大沢勝次郎という権力者と対等となる事を選んだのですよ。
ですが私には我慢ならなかった。どれだけ旦那様が奥様を愛していたにせよ、人殺しと一緒にいることは出来ない。
私は腰に下げていた手拭いを細く折り首に巻き付けました。旦那様の為じゃない。奥様にはそんな惨い跡は似合わないと思ったのです。
仏様に手を合わせすぐさま部屋に戻り、手早く荷物をまとめました。明るくなると逃げたことがバレてしまう。
人生の中で一番走りましたねえ。
その夏終戦を迎え、世の中がドタバタしている内に伴侶を得て今こうして幸せな一生を終わろうとしております。
あらあら和尚様泣かないでくださいませ。本当に大切なお話はこれからですよ。
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