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あかりは慎太郎の五歳年上だ。
両親が共働きのため、小さいころは、よく慎太郎の面倒をみてくれた。
その姉が、翌週に結婚式を控えている。日本で式を挙げ、そのあとでベトナムに転居するのだ。
あかりの夫になる人は、ベトナムと日本を行き来している。橋梁を作る仕事をしているそうだ。慎太郎も会ったことがあるが、スーツの似合う、真面目そうな男だった。
ウエディングドレスは、レンタルではなく、オーダーメイドなのだと言う。「ベトナムでもパーティーするし、お父さんが買ってくれるって言うから」ということらしい。
「どーお? 似合う? かわいいかしらん」
そのウエディングドレスを着て、あかりは試着室の中でくるくるまわった。ビスチェタイプの白いドレスだ。白い肩があらわになり、胸の谷間がのぞいている。
「まあ、いいんじゃね」
慎太郎は、姉から目をそらし、ぶっきらぼうに返事をした。
あかりはかばんからケータイを取り出して、パシャパシャ自分の写真を撮っている。
「一緒に撮ろう」
頬をくっつけてきたので、「いやだよ」とあとずさった。
「お似合いですわ。お式が楽しみですわね」
にこやかに、ドレスショップの店員が言う。あかりは、ますます上機嫌になって「あたし、このままドレス着て帰るわ」と宣言した。
「なんでだよ? 着替えて帰れよ」
「いいじゃない。もうあたしのドレスなんだし。どうせ車で帰るんだし」
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