ぼくは洋服屋さん

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またここで可愛い時計をちらりと見る。 もうすぐ夕方になろうとしていた。ぼくは自分の集中っぷりに少し驚いて、だけどちょっと誇らしくもなった。 なんていったって、ぼくはプロの洋服屋さんなのだから。 灯りをつけて、ぼくは仕上げに入っていった。ボタンを表から見えないところへ縫い付ける。 隠しボタンというやつだ。 夜空にボタンが浮かんでいたらみんながびっくりしてしまうからね。 そして同じように見えないところに夜空さんのイニシャルを入れてあげる。なんてイニシャルかは言えない。お客さんの名前は秘密にしておくと決めているからだ。 外はすっかり暗くなって、窓からは月が見えていた。
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