0人が本棚に入れています
本棚に追加
集中していると一日はあっという間だ。
それにしても外套が一日で完成してしまった。いつの間にかぼくの腕は上がっていたようだ。
テーブルの上に散らばった糸や布の切れ端をきちんと片付けて、部屋の隅の棚へ向かう。この棚は水色で塗られていて、ぼくのお気に入りの一つだ。
そこにはぼくのお店のマークが入った大小さまざまな紙袋が仕舞われている。
ぼくは一番大きな袋を取り出した。そして綺麗に畳んだ外套をそっと入れた。
それから青いインクの万年筆を手に取るとこう書いた。
「夜空さん、ご注文ありがとうございました。とっておきの外套ができあがりました。
風邪には気をつけてください。 洋服屋より」
手紙を封筒に入れて、溶かした赤いロウソクの上からスタンプを押して封をした。
紙袋の取手にはお店のドアと同じ色の青いリボンを結ぶ。
なんて完璧なんだ!
ぼくは思わずそう呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!