ぼくは洋服屋さん

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集中していると一日はあっという間だ。 それにしても外套が一日で完成してしまった。いつの間にかぼくの腕は上がっていたようだ。 テーブルの上に散らばった糸や布の切れ端をきちんと片付けて、部屋の隅の棚へ向かう。この棚は水色で塗られていて、ぼくのお気に入りの一つだ。 そこにはぼくのお店のマークが入った大小さまざまな紙袋が仕舞われている。 ぼくは一番大きな袋を取り出した。そして綺麗に畳んだ外套をそっと入れた。 それから青いインクの万年筆を手に取るとこう書いた。 「夜空さん、ご注文ありがとうございました。とっておきの外套ができあがりました。 風邪には気をつけてください。  洋服屋より」 手紙を封筒に入れて、溶かした赤いロウソクの上からスタンプを押して封をした。 紙袋の取手にはお店のドアと同じ色の青いリボンを結ぶ。 なんて完璧なんだ! ぼくは思わずそう呟いた。
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