ぼくは洋服屋さん

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ただし、ここは"普通の郵便局"ではない。 普通の郵便局では届けられない場所へ物や手紙を届けてくれる郵便局なのだ。 しかも夜しか開いていない。 昼間に来てみたことがあるけれど、しんとしてまるで人気がなかった。といっても夜も賑やかという訳ではない。 建物の右手に小さな受付窓が備え付けられている。そこで局員さんに荷物を渡す。 切手はいらない。お金もそこでは払わない。 決まった用紙に自分の名前や住んでいる所を書くと、あとから「◯◯◯円です」と書いた手紙が届くのだ。 あとは普通の、昼間もやっている、街の大きな郵便局にそれを持っていけば料金を払うことができる。どういうシステムなのかはわからない。 だけどぼくはただしっかりと夜空さんの元へ外套が届けばそれで満足だ。 ぼくはこんな風にして、どんな遠くへもいつもきちんと洋服を届けている。 窓口に紙袋を出して局員さんを見る。 「あ」とぼくは声を上げていた。 そこにいたのはいつもの白髪の局員さんではなく、ジェフだった。
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