バニーガール

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バニーガール

 相変わらず定職にもつかず、家でゴロゴロしている日々だった。一時のようにアル中で、朝から飲むということはなくなっていたが、また酒を飲むようになっていた。将来に希望も持てない日々。ある日ボクはバニーガールの店に行こうと思いたったのだった。  なぜバニーガールの店に行こうと思ったのか、理由を思いつくまま上げる。まずはドラゴンクエストというRPGゲームにバニーガールが高確率で出てくるということだろう。子どももプレイするゲームで出せるギリギリのエロさがバニーガールなのか、または作り手の堀井雄二の性癖がそうなのか。キャラクターデザインの鳥山明のマンガでもバニーガールが出てきた記憶がある。  あとは自分の性癖の問題。ボクはブルマフェチであったのだが、残念なことにブルマは廃止になってしまった。ブルマが廃止になった頃はひたすら朝目覚めるたびに不協和音が頭の中で鳴り響く絶望の日々だった。しかしボクのリビドーはブルマに似たショートパンツに活路を見出し、ショーパンフェチとして生まれ変わったのだった。  「ブルマが好きならブルマの風俗店に行けばいいじゃん」と思う人はなにもわかっていない。そういうものは「養殖」と呼ばれ、ほとんど評価されない。「天然」のブルマが好きなのである。男はどうしても精神的なものにこだわるからね。それは男用のオナホールと女用のバイブレーションの売れ行きの差を見ればわかる。悲しいかな、男はうまくできた美人のダッチワイフより、ブスな生身の女の方を選んでしまう生き物なのだ。この業界「裸はエロくない」という格言がある。友だちの女の子にこのことを教えたらかなりびっくりしていた。男なんてのは裸になれば喜ぶものだと思い込んでいたらしい。服を着ている方がエロいと感じる人もいるってことだ。女の性癖ってどうなんだろう?レズビアンは別として、男と比べてあまりアブノーマルな性癖を持った女というのは少ない気がする。  バニーガールはボクの好みなんじゃないの?という気がしていた。それで仙台にピロウズ・ライブの遠征に行った時、新宿バスタから仙台に向かう高速バスの中でスマホで「バニーガール 仙台」で調べたところ、ライブハウスの近くにバニーガールの店があると知ったのである。値段もホームページを見る限りそんなに高くない。ライブが終わった後、ボクは一人でその店に行った。  その仙台の店はバニーガールが一対一で付いてくれる店だった。タッチは禁止だったが、見るぶんにはいくら見ても構わない。バニーガールは黒いバニースーツを着て、股のところがハイレグに切れ上がっていた。網タイツを履き、胸の谷間が見えて、頭にウサ耳のヘアバンドをつけていた。これはエロいなと思った。値段も90分いて飲み放題で9千円くらいだった。もっと早くこういう店に行けば良かったと思った。 「こんばんは」と言ってバニーガールの女の子が来た。  最初に初めてかどうか聞かれ、そうだと答えると料金説明や飲み放題のコースの説明、30分ごとに女の子が交代するシステム、指名する場合はその指名料の話などをした。 「今日はお仕事ですか?」 「いや、ピロウズってバンドのライブ遠征で来たんです」 「そうなんですか。飲み物はビールにしますか?」 「うん。ってかボクビールしか飲めないんだ」 「そうなんですか」 と言って、ビールを注ぎに行った女の子の丸くて白いふわふわのウサギのしっぽが付いたお尻ばかりじっと見ていた。 「なかなか出てこないですね」ビールが出てくる蛇口から泡ばかり出てくる。女の子はスタッフの部屋に引っ込むと、別のバニーガールを連れてきた。ビールサーバーを取り替えて、ビールを注いでやってきた。  ビールを飲みながら、ボクは持ちネタのテーブルマジックや眉毛が片方だけ動くネタなどを披露した。なんでこっちがお金払ってるのに、ネタを披露しなくてはいけないんだろうか、って気もするが仕方がない。 「ピロウズっていうんですか?」 「そう。あんまり有名じゃないんだよね。テレビに出ない方針だから、知る人ぞ知るってバンド」 「そうなんですか。どんな音楽なんですか?」  ミスチルやスピッツみたいなメロディーラインがしっかりしているバンドだよということを説明した。話している間、後ろの席で別のバニーガールが客に「私は☓☓さんのこと好きですよ」と背広を着た男に言っているのを聞いた。なんとなく、客をその気にさせるテクニックなのだろうと思った。ボクはこういう店に行った経験はあまりなかったが、よく言うのは政治の話、歴史の話、野球の話は禁止。というもので、理由は揉めることになるからだ。というものである。しかし本屋で「あんた、自分の国の歴史ぐらい知らないと、外国人と話した時恥をかくぞ」的なタイトルの本が売られているが、歴史の話ってタブーじゃなかったのかな?  その後女の子が2人交代して、計3人ついたところで帰った。2人目のバニーガールは最初からすごい不機嫌で(理由はわからない)なにを言っても無愛想で、機嫌が悪そうだった。客商売なのにと少し思ったが、ボクは文句は言わなかった。2人目が終わり、これで帰るのはちょっとなあと思ったので、延長して3人目のバニーガールに来てもらった。こちらはさっきと打って変わって明るい子で、少しぽっちゃりしていたが、一緒にいると元気がもらえるバニーだった。彼女曰く、結婚するなら見合いが良い。とのことだった。見合いなら、変に恋愛ズレていない、純粋な男の人と結婚できる可能性が高い、ということを30分力説して終わった。「次のお店、いいところ紹介しましょうか?」と3人目のバニーちゃんに言われたが、もうホテルに戻って寝ます。と答えてホテルに帰って、さっきのバニーちゃんたちのお尻や胸の谷間や網タイツの足などを思い返して眠った。
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