ないない

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俺は何も持ってない。 やりたいことも無い。 やりがいも無い。 生きがいも無い。 才能も無い。 金も無い。 家族も無い。 恋人も無い。 “ないない”それが俺。 だけど有り余るほどのバカみたいな愛情みたいなものがあって、それを吐きだしたくて哀しくて寂しくて堪らなくなる時があるんだ。 そんな時はコンビニに行く。 ビールと枝豆を買って会計をして。 店員さんと一言二言話す。 今日は寒いですね、とか、帰りはもっと寒いから、風邪ひかないようにね。 なんて。 それで今日は救われる。俺の今日は救われる。 “ないない”の毎日が、息苦しい毎日が、ほんのちょっと色づく。 その瞬間が好きだ。 本当は、もっと愛情を吐きだしたい。 誰だっていい、優しくしたい。 想いやりたい。愛情をいっぱいかけたい。 でもそんな相手も居ない。 俺は家族も離散していて、もう修復も不可能な程、家族間には狭間があった。 俺がいくら許したところで、医者には会うのを止められる。 唯一母親とは電話することがあって、其れだって話を聞くだけだ。 一時間。二時間のときもある。 一方的に話しまくる母親の話を、うんうん、と愚鈍に聞いているだけの俺。 でも、最後に話せて楽しかったよと言われれば、一気に救われた気分になる。 そんな母親にも、もう十年会ってない。 誰かを愛したい。誰でもいい。 出会い系で相手を探す勇気はない。 それに、多分俺は恋愛をしたいんじゃないんだろう。 無償の愛に近い何かを、相手に捧げたい。 愛で満ち溢れたい。 それも、自分からでてくる愛情で。 満たされたい。 独り言だよ? “ないない”の俺が、誰かを愛したいなんて、図々しいし、無茶なんだ。 だけど愛したくて愛したくて、俺は破裂しそうになる。 ねぇ誰か。 貰ってよ。 俺の愛情を。 “ないない”を埋めさせて。 “誰でもいい”なんて嘘なんだ。 本当は君がいい。 これは“ないない”の俺が宛てた、君へのラブレター。 ねぇ君。 愛させて。 END
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