9人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
高速道路を走るタクシーの後部座席で携帯の着信相手を見ていた涼介は、ようやくスマホを耳にあてる。
「はい、もしも……」
「涼介! 今、何処にいるのよ! 記者会見ドタキャンして。
こっちはえらい騒ぎになってるのよ、分かってる?」
「ごめん、美憂。今、バイクのパパラッチに追いかけられてるんだ」
「だから今、何処で何やってんの?」
「君には関係ない。それに俺は君と結婚するつもりも無い」
それを聞いた美憂は少し大人しくなった。
「…………」
「美憂、君にも分かるだろう? この結婚がどういう物かぐらい」
涼介は追いかけてくるパパラッチの方をちらりと見た。
「涼介、これはビジネスなのよ。今さらキャンセルなんて出来っこないの。」
「それも分かるよ。でも、俺だって人間だ。人形じゃない」
「私達の仕事はね、みんなに夢を与えたり元気付けたり、楽しませる仕事なのよ」
「分かってるさ……」
「その仕事を選んでるのは自分自身じゃない。涼介、貴方の活躍を願ってるファンだって沢山いるの。もうちょっとしっかりしてよ!」
「美憂。君は本物のプロだよ。僕は君みたいになれない。君には悪いがね」
「いい? 涼介。東京ドームを一度や二度満員にした位で満足してるんじゃないわよ!
たった一回のスキャンダルで……終わる事だってあるのよ!」
とにかく、一度戻って来る様に言われたのだが頑なに断り電話を切った。
記者会見場の控室では美憂が両手を広げながらスタッフに怒っている。
「ちょっと! 涼介のマネージャーは? 彼が付いていて、どうしてこうなるの?」
「すみません……それが、そのマネージャーとも先程まで連絡が取れなくて……。
最初のコメントを投稿しよう!