小さいことは嬉しきことかな

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小さいことは嬉しきことかな

【日向子サイド】 経験があるふりをしたのにあっさり嘘を見抜かねて少し気まずい。でも、彼は優しく愛し続けてくれた。 厳密に言うと、途中までの経験はある。だから途中までは余裕を持って接していた。 でも、最後までしたことがないから、怖かった。途中までしたことがあるから、こう言ったらなんだけど、彼のソレが小さいことで私は救われた。 いつも、途中までして男の人の髪に指を絡ませて、その髪質がゴワゴワだとスッと気持ちが冷めてしまう。 スプレーで固めても、雨が降ればペタンコになってしまいそうな柔らかな髪が好き。彼の髪は、細く柔らかくて、ちょっと天然の茶髪でまさに、私の好みそのもの。 指を絡ませるだけでなく、彼のうなじや耳元に唇を寄せて、食むように後れ毛に口づけする。猫っ毛の髪。 それだけで経験がないのに、あるふりをしてでも最後までしたくなる。しかも、優しく愛してくれて、ソレが小さい。初体験のツキに恵まれている。 彼は遊び慣れてそうで、テクニックを駆使して私の緊張をほぐしてくれる。痛くならないように、なるべく前の方を焦らすように愛してくれる。 あまりの慎重さに私の方が悶えてしまう。思わず腰をくねらせると、 「そんな風にされたら、激しくしちゃうよ?」 切れ長な目で射るように見つめてから、ほんの少しだけ動きが強くなる。それでも彼は、私のカラダを気づかって、少しずつ少しずつ、楽譜のクレッシェンドのように、慎重に私の反応を見ながら激しくしてくれる。 その遊び慣れた余裕に甘えて、私は彼の髪をくしゃくしゃと手で弄ぶ。指に触れる柔らかな髪の感触に、私は痺れるような快感を感じる。彼が私の中が痛まないように撫でたり摘まんだりしてくれる手前の膨らみを軽く指で弾いたとき、初めて本当の快感で震えた。 その震えを目ざとく見つけた彼は、 「俺もいっていい?」 息を弾ませながら呟く。私が頷くと、コンプレックスの小さな胸を片手で揉みしだき、吸い上げながら、腰を小刻みに振る。 やがてゴム越しにも熱いものを感じたと思ったら、彼の背中から大量の汗が吹き出す。荒々しい息を整えてから、ゴムが取れないように気をつけながらカラダを離してくれる。 遊び慣れてる危なそうな男。 もうすぐクリスマス。一度で飽きられたくない。次はあるのかな? 期待と不安が入り交じるなか、彼は私の頬にキスをしながら、 「また逢いたいな」 とろけるような微笑みで言ってくれる。 その言葉が社交辞令でないことを祈りながら、私たちはホテルを出た。
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