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彼女は仕事から帰ると、いつものようにソファーベッドに寝そべった。
仏頂面のまま、黙って僕に右手を差し出す。
僕もいつものように彼女の右手をとって、脱脂綿に染み込ませたリムーバーで、彼女の爪を彩るサンゴ色のマニキュアを拭い始めた。
すると彼女は、いつものように喋りまくる。
「ちょっと聞いてよー。今日ね、お店でね、あいりちゃんが私のお客さん盗ったんだヨ。それも勝手に横に座ってきてさ。わたし看護学校に通ってるんだけど、学費とかお部屋の家賃とかとってもたいへんなんて、気を引くようなことをぺらぺら吹き込んじゃって、もうひどいの。本当は学校なんか全然出席してなくて、学費とか家賃だって親から仕送りしてもらってるくせにだよ?」
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