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ある日、一匹の蛇と出会った。誰もいない境内で真っ白の体に光を集めるように日差しの中を這っていく。ズル、ズル、と引きずる体はご神木の杉の木と変わらない太さだ。私は驚き、カメラを構えるのも忘れてただ、じっと蛇を見つめていた。
「・・・・。」
満足そうに顔を上げた蛇の真っ赤な目が私を捉えた。
「・・・・・!」
蛇の顔に汗が浮かんでいく。蛇にも発汗器官があるのだと私は冷静に観察していた。むしろ慌てているのは蛇の方である。
「!?・・・!」
首をきょろきょろと振り回し、周りを確認している。私はがっつりとその様子を見ていた。やがて、蛇はゆっくりと方向を変える。その先にはご神木があるようだった。ズル、ズル・・・と移動していく蛇を私は追いかけた。好奇心のままに。
「・・・・・・。」
時折、蛇が私の方を見る。なぜついてくるのだろうか。そんな声が聞こえてきそうだ。面白くなって私はどんどん追いかける。ご神木を超えて、社殿の後ろの獣道へ入る。奥は光の差し込まないのか何も見えない。どんどん蛇は奥へと進んでいく。そのスピードは次第に速くなり、いつの間にか走らなければならないほどになっていた。チラ、と赤い目がこちらを見る。不思議と信頼のようなものを感じた。前を向いた蛇は一層スピードを上げ、私は遠くに後姿を捉えるので精いっぱいになる。真っすぐに走っていくと、私は一瞬白い光に包まれた。やっと目を開くと、そこはとても明るい場所だった。きらきらと光が降り注ぐ。小さな花や草が咲いている。私は感動もそこそこに蛇を探した。前にはいない。右も左も見渡したが見つからない。上を見上げてみる。真っ白な光だけが目に入った。木の上にいないかと上を向いたまま歩いていた。すると・・・一瞬ふわりと足元の感覚が無くなった。落ちる、と理解するまでに時間はかからない。じわじわと迫りくる恐怖から私はパニックになる。しかし、私の無残な死体が出来上がることはなかった。ボフッという音が地下に響く。私は生きていた。なんとかして上に戻る道を探さなければならない。立ち上がろうとして、その視線に気づいた。暗闇から無数の小さな赤い光がこちらに寄ってきている。それはたくさんの小さな白蛇だった。私が顔を上げると大きな白蛇が小さな蛇たちを愛おしそうに見つめていた。あの目、私を振り返ったあの赤い目はきっと、そういうことだったのだろう。私は立ち上がることを諦めた。
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