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それは、お盆の最終日のこと。
叔父の車でお墓参りに行った俺は、そこの駐車場で珍しい毛色の猫を見た。グレーのような、プラチナのような、でもどこかブルーっぽいような…とにかく、見たこともない、表現のしようがない毛色だった。つやつやと柔らかそうな短毛は、陽の光の受けようで色合いを様々に変化させている。
綺麗な猫だな。
思わず目で追うと、猫はひょいと塀に飛び乗り、なぜかこちらに向かってきた。猫って生き物は人間を見ると逃げちゃうものだと思っていたから、ちょっと驚いた。首輪はしてないようだけど、どこかの飼い猫で、人馴れしてるのかもしれない。
小柄なその猫は、つんと澄まし顔で塀の上を歩き、横を通りすぎるときにちらりとこちらを見た。瞳の色も毛色と同じで、その不思議な色合いのせいか、どこか神秘的な雰囲気がある。
猫は、どういうわけか見下すような視線を俺に寄越したあと、
「………ふん」
なんだか鼻で笑ったような気がした。
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