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礼司は薬王寺の前で急ブレーキをかけ、止まると
目玉が追いつき正面を向いた。
「降りろ!」
栗原はゴロゴロと転げ落ちた。
「行くぞ!」
礼司は車を止め降りて、天狗の団扇を大きく扇ぐと
薬王寺の天狗の像の目が光って
動き出し礼二たちの前に立った。
「何なの?」
「なんだ!」
由美と麻実と栗原がありえない出来事に呆然とした。
「見ろ!見方が来た」
目玉は真っ赤になり赤い光線を栗原の乗ったタクシーに放ったが
石でできた天狗は自分の持っていた団扇で扇ぎそれを跳ね返した。
跳ね返った光に包まれた赤い雲は空を覆うほど大きな見玉は黒くなり
次第に小さくなって重たそうに降りてきた。
「天狗様行くぞ!」
礼司はライトをハイビームにして
ギアを入れアクセル思い切り踏んだ。
「キュキュキュ」
タイヤが音を立て白い煙を出して回った。
「行け―!」
赤い目玉は礼司の乗っているタクシーに向けて光線を放った。
行燈に付けた鏡が赤い光線を跳ね返し
礼司のタクシーは目玉に向けって突進し宙に浮き突進していた。
「魔美!矢を放て!」
魔美は弓を引き弦を顎まで引いて、
矢を放った。
その矢は目の中央に当たるとピリピリとヒビ入り
続いて礼司の運転するタクシーぶつかった。
「バーン」
目玉は肉片となり花火のように八方に散り
肉片と血しぶきが地面に落ちて来ると
高尾山のいたるところから白い物体が空に向かって上って行った。
「やった!11時50分任務終了」
魔美が飛び上がると礼司の車が消えていた。
「夜野さんどこに行ったんですか?」
栗原が谷底を見渡した。
「向こうに帰ったんじゃない、空を飛んで」
魔美が笑っていた。
「俺たちどうやって帰ればいいですかね?」「うふふ、朝まで待つしかないようよ。幸いお寺の朝は早いから何とかなるわ」
由美はあきらめたように言った。
「ところで俺の車は?まだローンが残っているんですよ」
「絶対戻ってこないから盗難届出せば保険で戻るわよ」
「ですよね、盗難保険入っていたかな?」
「きっと入っているわよ」
魔美の言葉に栗原が納得した。
「それより栗原さんこの事は秘密にしてくださいね」
「もちろんですよ。言っても誰も信じないしあの二人はどうしますか?」
「大丈夫、記憶が消えているはずよ」
魔美がケラケラと笑った。
「・・・アッ」
由美は右目を抑えた。
「魔美、右目の視力が戻ったみたい」
「どうして?封印した鬼じゃないのに・・・」
「ええ」
由美と麻実は首を傾げた。
「あっ、銅鏡どうするんだろう?」
「ゴー」
大きな音がすると目の前にタクシーが止まった。
「夜野さんどうしたの?」
「気が付いたら登山口にいた。勢いで帰ろうと思っていたのに」
「本当?」
由美は口を押えて笑った。
「とりあえず、自宅に送ります」
礼司は銅鏡を社殿に戻してきた。
礼司はタクシーで高円寺へ向かうと
栗原が話しかけた。
「すみません、妖怪と鬼ってどう違うんですか?」
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