2章 硝鬼

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2章 硝鬼

              2章 硝鬼 墓の前で消えた礼司は真っ暗なトンネルのような道を歩いていた。 「なぜこんなに時間がかかるんだ?」 礼司は黒いトンネルを歩いていた。 「ここは鬼の世界か?」 礼司は鬼と目が合わないように目を閉じたまま歩いていた。 耳元で大きな音しても知り合いの声が聞こえても 悲鳴が聞こえても、何かが体に当たっても礼司はひたすら真っ直ぐ歩いた。 礼司の中にある恐怖は永遠続く時間だった。 恐怖で目を開けるのを待っている鬼がいる、 突然目の前が明るくなった。 「おっと待て、これも罠だ!」 昔映画で朝に見せかけてドラキュラが襲ってきたことを思い出した。 「今何時だ?鬼を退治して高円寺に戻ったのが1時頃・・・」 礼司は歩くのを止め座り込んで自分の中で体内時計を感じ 60からカウントダウンを始めた。 「60・・・・5、4、3、2、1」 突然自分の体が椅子に乗った。 その時スマートフォンが鳴った。 「夜野さん、1時過ぎですよ。どこにいるんですか?」 運転手仲間のミソから電話があった。 「ああ、ミソ君か」 礼司は目を開けると周りを見渡すと善念寺の前だった。 元の世界に戻った礼司はため息をついた。 ミソと言うのはあだ名で田中雄と言う違うタクシー会社の運転手仲間で 俺の地獄タクシーのあだ名を聞いて近づいてきた良いやつだ。 「さっき、渋谷で事件が有ったので連絡しました」 「何があった?」 「コンビニの蛍光灯が突然割れて怪我人が出たそうです」 「蛍光灯が割れた?」 「1本か?」 「いいえ、2本です?」 「過電流なら2本以上割れるな、まあ人が死ぬことはないだろう」 「それが大事故らしいですよ。後でニュースを見てください」 「わかった、今から仕事で歌舞伎町へ向かう」 「了解です!また後で」 ミソが電話を切った。 「まさか鬼じゃないだろう」 礼司はスマフォでニュースを見た。 「ヤバい死人が出ている」 コンビニの床が血だらけの映像が映っていた。 「蛍光灯が割れただけで死ぬか?」 礼司は事故の詳細が知りたかった。 礼司は高円寺から新宿へ向かう途中、初台で歌舞伎町に行く客を拾い、 歌舞伎町から錦糸町へ行く客を拾い、 錦糸町から平井客を降ろすとすぐに乗せる事を続け 休む間もなく渋谷方面へ行く事が無く朝5時に帰庫し 礼司は家に着くと倒れるように眠った。 「あっ車!」 12時に礼司は突然目を覚まし高円寺に向かった。 昨日の事が夢で無ければ善念寺の前に車があるはずだった。 善念寺は高円寺駅から歩いて10分ほどの甲州街道沿いのお寺で もう一つ気になっていた事があり善念寺に向かうと 栗原の車は間違いなく止まっていた。 「こんにちは」 「あっ、夜野さん」 住職の兼陽が穏やかに笑った。 「今日はどうしました?」 通夜、葬式で呼ばれる礼司は住職と親しかった。 「開け休みなんですが駐車場の車、友達の預かり物なんです。すみません」 「そうでしたか。良かった、今日置きっぱなしだったら  警察に連絡しようと思っていました」 「すみません」 礼司は自宅の駐車場を借りなければならないと思っていた。 「すみません、この善念寺の隣の大鳥神社って?昔」 「ええ、明治の神仏分離で二つに分けられてしまいましたが 昔は一緒でした。ですから鳳さんと私は遠い親戚なんです」 「ほう、それは面白い」 「それが宮司の鳳さん一家が三年前突然行方不明になって」
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