1章 眼鬼

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「すみません、ちょっと家庭的に無理なので・・・明日練習に参加します」 魔美にとって段などどうでもいい話で矢によって鬼を倒せればよかった。 「ああ、お母さんの介護か残念だな」 弓道部の顧問の田代が魔美が参加してくれることが決まって ニヤニヤして戻って行った。 「ねえ、魔美。スポーツ万能だから運動部の方が向いているんじゃない。 合気道部にも誘われているんでしょう」 千枝が興味深そうに近づいてきた。 「うふふ、私は裁縫が好きなの」 放課後、裁縫部に行った魔美は袴を縫いだしていた。 「鳳さんは運針が上手よね」 顧問の田代が話しかけた。 「ありがとうございます」 「今どき和裁がそこまで出来る人は居ないわ」 「袴は家業なので・・」 「うふふ、そうだったわね」 「あら」 窓の外にCD大の黒い影が見えた。 魔美は長い針に絹糸を通しそれを持った。 「ちょっとトイレ行ってきます」 魔美は立ち上がると校舎の裏に行き 狭い通路を歩くと1mの高さをそれが漂っていた。 「あんた何者!」 糸の付いた針をそれに放り投げると黒い物に 突き刺さって糸が絡まり消えて行った。 「来るのかな?」 巫女の修行中の魔美は何の予兆か分からず 空を見上げた。 魔美は五時からファミリーレストラン・スティックに入った。 「おはようございます」 「ああ、魔美ちゃん。今日は九時まで出来るかな」 店長の岡がいきなり聞いた。 「ええ!またバイトさん急に休み?」 「ああ、まったく家族が突然日本に来たんだそうだ。 外国人はシフト通り働いてくれない。魔美ちゃんはまじめで助かるよ」 「私も学生だからあまり引っ張らないでくださいね。テストも近いし」 「でも、魔美ちゃんそろそろ学校教えてくれよ。 その制服この辺で見ないから」 「うふふ、ないしょ」 魔美はテキパキと仕事をこなしながら時々外の様子が気になっていた。 「やはり何かいる!」 「いらっしゃいませ。今日のおすすめは・・・」 魔美が進めるメニューは殆どの客が注文をして それは魔美の能力の一つ人の心を動かす力だった。 客席の奥には常連の態度の悪い男たちが ふざけあって時々魔美の様子をうかがっていた。 「おーい、鳳さん。俺たちと遊びに行かねえ?」 「いいえ、行きません」 魔美が振り返って行った。 「おい、冷たいなあ」 「光が丘女子高の子だろう」 「おお、あそこはミッションスクールで固くて有名なんだよな。 スカートはひざ下10センチだし異性交遊は退学らしい」 「マジか!じゃあ間違いなく。ヒヒヒ」 九時に仕事を終えた魔美はアルバイト先から歩いて家に着くまでは 暗がりが一か所、それは善然寺の裏側だった。 能力を持った魔美にとって暗がりは怖い物ではなかったが 昼間から見えている黒い物が何者か不安だった。 そこに突然後ろから首に腕を回し口を押える男がいた。 「おい、足を抑えろ!」 もう一人の男が暴れる魔美の足を掴み ワゴン車に魔美を乗せた。
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