2章 硝鬼

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「はい、思い出しました」 「二人とも歌舞伎町でホストをしていて一昨日は斉藤君、 昨日は木村君が亡くなったんだよ」 「えっ!それが私とどういう関係があるんですか?」 梢子は何も知らない様子だった。 「では三田ひろ子さんは知っていますよね」 「は、はい」 礼司が聞くと梢子の態度が変わった。 「自殺した友人です」 「じゃあ、原因は知っていますか」 「知っています。いじめです。男とやったヤリマン女と学校中に  噂を流されて」 「えっ、あんたが流したんだろう」 「違います!」 梢子は涙声で答えた。 「じゃあ、噂を流したのは誰だ?」 「たぶん佐藤秀子って女です。ひろ子とトップを争っていたんです」 「警察の調べではあんたが広めて事になっているぞ」 「知っています。でも否定して誰も信じてくれなかった」 「それでどうなった?」 「私は噂のせいで推薦を受けていたB大学に入られず、 佐藤秀子はひろ子の代わりにK大に推薦入学しました」 「まんまと罠にはまったわけね」 魔美は自分に置き換えて考えてみていた。 「じゃあ、君は間違えて硝鬼に狙われるぞ」 「それって?」 「両足をぶった切られて殺される!」 「どうしてそんな・・・」 梢子は体を震わせ足を抱えて泣き始めた。 「そう言えば三田ひろ子さんのお父さんと会った事ありませんか?」 「はい、巣鴨で何度か。一緒にお墓参りもしました」 「という事は噂を広めたのは佐藤秀子って知っているんですか?」 「はい、お父さんは佐藤秀子を凄く恨んでいました」 「魔美、ヤバいぞ。狙われるの佐藤秀子だ」 「うん」 魔美は梢子の方を見た。 「梢子さん、佐藤秀子の家は?」 「お父さんが国会議員です」 「なるほど、学校は父親への忖度でいじめを隠ぺいか」 「夜野さんもう11時過ぎています」 礼司は時計を見た。 梢子を家に送った礼司はタクシーを猛スピードで走らせた。 「夜野さん、詳しい住所は梢子さんが調べて送ってくれるって」 「わかった、とりあえず阿佐ヶ谷へ向かうぞ」 礼司は頭に阿佐ヶ谷駅を思い浮かべて6速へギアを入れアクセルを踏んだ。 数秒後、タクシーは阿佐ヶ谷駅前のロータリーに着いた。 「メールが届いた、この住所よ」 「おお、わかった」 礼司はタクシーのナビに住所を入れた。 「国会議員か・・・黒い高級車」 赤坂近辺を走る黒い高級車が礼司の頭をよぎった。 ~~~~~~ 「ただいま」 秀子が10時過ぎに帰ると母親の圭子が不機嫌だった。 「遅かったわね」 「うん、友達と話が弾んちゃって」 「勉強はちゃんとしてよ。お父さんのメンツがあるんだから」 「わかっているわよ」 「食事は?」 「食べてきた、お父さんは?」 「今日は遅くなるようよ」 「良かった・・・」 秀子は父親佐藤恒造がいるとお説教ばかりで嫌だった。 テレビを見るとニュースが流れていた。 「昨夜0時過ぎ、新宿歌舞伎町ホストクラブ love menで従業員木村太郎さんの 腹部にボトルが刺さって亡くなる事件がありました。 事故の原因を調べています」 「あら、変な事件ね」 圭子が画面を見ていた。 「うん」 「一昨日は男の人に蛍光灯が顔に刺さって亡くなったんだって」 「そうか・・・」
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