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礼司が聞くと秀子がうなずいた。
「彼らは鬼に殺されたんだ」
「えっ、鬼?」
「ああ、死んだ三田ひろ子さんのお父さんが呪いをかけたんだよ。
命を懸けてな、斉藤敏夫には目、
木村太郎には腹、そしてあんたには足だ」
それを聞いた心当たりある秀子の顔色が変わり震えだした。
「どうした?」
秀子はズボンをめくると膝から下の足の色が黒く変化
皮がむけ血がにじんでいた。
「足がかゆくて掻いていたらこんなになっちゃって」
すると食器棚のガラスが秀子の足をめがけて飛んできた。
礼司は秀子を抱いてそこから逃げた。
「うっ!
礼司がガラスが突き刺さった痛みで声を上げた
「三田さんお父さんに恨まれる理由があるか?」
礼司が言うと秀子は涙を流しながらうなずいた。
「ガラスの無い部屋に移るぞ、どこにある?」
「クローゼット」
「行こう」
礼司と魔美と秀子走って二階の廊下の
突き当りのクローゼットに入った。
「私、ひろ子をいじめた・・・」
「彼女をレイプするように命令した人間はいるのか?」
「いないと思う・・・ただ彼たちと偶然に街で会ってお茶をした時
ひろ子が私のライバルだと言ったら手伝ってやる言われたの・・・その後
彼らにひろ子をレイプしたって連絡を受けた」
「じゃあ、噂を流したのも?」
「彼らの中学の同級生は私だけじゃない!」
「すべてお父さんへの忖度」
魔美はだんだん事情が分かって来た。
「それは何度も経験している、子供の頃から」
ガシャン、ガシャンクローゼットに
ガラスが雨のように当たって激しい音を立てていた。
「痛い、痛い」
秀子の黒ずんだ足の肉が裂け血液が噴き出してきた。
「なんだこれは?」
「やだ、やだ」
秀子は足の力が抜けて来て足首が動かなくなってきた。
魔美はそれを見てクローゼットにかかっている
スカーフを秀子の足に巻いた。
「魔美、これは三田の親父さんに本当の事を伝えなきゃだめだ」
「伝えるってどうやって?遺体は警察じゃないの」
秀子は亡くなった人に伝える意味が解らなかった。
「巣鴨の家におやじさんの霊がまだ残っているな魔美」
「うん、巣鴨に行こう、そして秀子さんが本当の事を伝えて」
「でもどうやってここを出るの」
礼司はポケットの中から鬼の根付を掴んだ。
それは金色に光り伸びて刀のように変化した。
「じゃあ出るぞ」
「OK」
礼司は刀を振り回し飛んでくるガラスを叩き落して
走った。
秀子の足をひたすら守りガラス破片は
礼司の腕や足に突き刺さった。
「いて!いて!」
礼司の両手両足から流れていた。
「ドアを開けるぞ、気を付けろ」
「大丈夫周りにガラスが無いから」
礼司は二人を乗せようとすると
隣の家のガラスの大きな破片が
秀子の足めがけて飛んできた。
「危ない!」
礼司は秀子の足を抱きしめた。
「うっ」
「ヤバい、ヤバい」
魔美は礼司の背中のガラスを抜いた。
「良し!行くぞ!」
「大丈夫、夜野さん」
「大丈夫じゃない」
礼司は背中から血を流しタクシーの
エンジンをかけ6速にギアを入れてアクセルを踏んだ。
数秒後、タクシーは三田の家の前に着いた。
「さあ、入るぞ」
礼司はかすれた声で叫んだ。
「おお」
ガラスだらけの三田の家は秀子を狙ってガラスが飛んできた。
それを礼司と魔美はそれを叩き落しながら二階の三田の寝室へ
行くとベッドの上に三田が立っていた。
「おい、三田さんあんた勘違いしているぞ!」
礼司が言うとガラスの攻撃が止まった。
「なぜだ?」
三田の霊は聞いた。
「この娘はひろ子さんを陥れていない、
すべて秀子さんをレイプした二人と
この娘の父親に忖度した学校が悪いんだ」
「おじさんごめんなさい、
私がひろ子さんをライバル視したから・・・」
秀子は泣きながら土下座をして謝った。
「うそだ、誰かが噂をバラまいたんだ」
三田が怒った。
「ネットの誹謗中傷なんて誰でも出来るのよ、
今それが問題になっているんだから」
魔美が逆にネットを理解していない三田を叱った。
「なあ、三田さんよ。一人娘を亡くしたあんたの気持ちよくわかる。
だけど復讐はいけないよな。特に鬼を使ってはいけない娘さんと一緒に
天国で会えないぞ」
「・・・・」
礼司は無反応な三田に続きを言った。
「三田さん、誹謗中傷した人間、いじめた人間、
いじめを隠ぺいした人間に必ず罰を与える」
「そんな事できるのか?」
「出来る、約束する」
「破ったらまた来るぞ。今度はお前に」
三田は礼司の顔を睨んだ。
「わかっている、ガラスは痛い」
「おじさん、ごめんなさい」
秀子はもう一度頭を下げた。
すると三田の姿がベッドの上から消えた。
礼司は秀子を自宅まで送った。
「秀子さん、今から家に帰ると何の変化もないはずだ。
でもこれを夢だと思わないください
鬼は必ずいて人間を食うんだ」
「わかっています」
「三田さん親子のお墓参り行って魂を鎮めてあげてください。
さもないとまた鬼が来ます」
「はい」
礼司は今の世界に戻った。
「今日は任務完了じゃない・・・な魔美、すっきりしないな」
「うん、ところで約束はどうするのよ。やらなかったら夜野さんを殺しに来るんだよ」
「誹謗中傷した人間はサーバーから追跡できる、いじめた人間はあぶりだす、
いじめを隠ぺいした学校側だなそれはマスコミを使おう」
「私は巫女いじめの罰を与えるけど良いかな」
「50%の0か怖い!」
「うん」
礼司は浜田に事件の経緯を説明し解決の報告をした。
「そうですか、佐藤代議士の娘さんがね。ありがとうございます」
「オイオイお前も忖度かよ」
「いいえ、国会議員の娘の足を切られて亡くなったら
犯人捜しで何の仕事もできなくなってしまいますよ」
「そうかそっちか。という事でサイバーポリスに
三田ひろ子さんを誹謗中傷した
人間を探し出してもらってくれ」
「わかりました、普通はやりませんけど
今回のお礼にやらせていただきます」
「頼んだぞ」
礼司はジャパンテレビの報道局の後輩水野に電話をした。
「夜野さんしばらくです。ちょっと調べて欲しいんだけどな」
「どうしました?」
礼司は三田ひろ子が二人の男にレイプされた事
三田ひろ子の自殺事件にいじめがあった事、
いじめの首謀者が三田ひろ子の親友の浅日梢子
にされ大学の推薦から落とされた事
三田ひろ子の高校には佐藤代議士の娘が当時在学中で学校ぐるみで隠ぺいした事そしてレ〇プ犯が謎の死を遂げた事を放した。
「わかりました。面白いですね裏取ってみます」
「ねえ、夜野さん一人娘を亡くした気持ちって何?」
「いや、そう言えば三田が納得すると思ってな」
「そうなんだ、真に迫ったいたから本当に娘を亡くしたのかなと思って
私とそっくりな娘」
「いや、娘はいないよ家族に縁が無いんでね」
「夜野さん、寂しくなったらいつでも言ってね。遊んであげる」
「あはは」
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