1章 眼鬼

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「助けて!」 魔美は足をバタつかせもがいた。 「パパ!パパ」 魔美は礼司の名前を呼んだ。 ~~~~~ 「パパ!?」 運転中の礼司の耳元で魔美の声が聞こえた。 「ん?魔美?」 「パパって俺か・・・?」 礼司は客を代々木で降ろし方南通りを下り大原交差点を 右に曲がり環七を走った。 「魔美!」 礼司は車の中で大声を上げた。 「パパ助けて!」 魔美の声が礼司の頭で大きく響いた。 「魔美、ぬおおおおお」 礼司がアクセルを踏むとタクシーが金色に光り猛スピードで 前の車を次々に抜いて行った。 高円寺の善念寺の前に着くと礼司は周りを見渡した。 「魔美!!!!」 礼司は大声で魔美の名を呼ぶと目の前に黒いワゴン車が止まっていた 「魔美」 礼司はその車の前に立ちドアを開けると 魔美を押さえつけている二人の男を目撃した。 「こら!何をしているんだ」 礼司は魔美の足を抑えている男の服を掴んで引っ張り3mほど投げ、 奥に入って魔美の手を抑えている男の胸ぐらをつかんで車から 引き落とした。 「魔美、大丈夫か?」 「う、うん」 魔美が体を起こすと礼司は男を睨みつけた。 「こら!集団暴行は許さねえぞ」 礼司の迫力に二人の男は膝を付き正座をしていた。 「もう一人」 礼司が運転席に向かうと運転手は真っ白な顔をしてハンドルにしがみついていた。 「どうした?」 「ば、化け物が・・・」 「鬼を見たのか?」 「はい」 「魔美、どうしたんだ?」 「私もわからない。アルバイトの帰りにこいつらに車に引き込まれて。それより夜野さんどうしてここにいるの?」 「ん、じゃあこいつらあっちの人間か?」 「うん、たぶん」 「ふう・・・ここは魔美の世界か?」 「えっ?」 魔美は周りを見渡した。 「ここは夜野さんの世界みたい。この車ごと移動した?」 礼司は罪を犯した人間と言えどこちらの世界に来たら 死んだも同然だった。 「おい、お前たち!ここはお前たちのいたここは世界と違うんだ。もう家族とも会えないぞ」 「ど、どういう意味ですか?」 魔美の腕を掴んでいた男が聞いた。 「お前たちはパラレルワールド別な世界から来たという事だ。周りを見て見ろ  元の世界と微妙に違うだろう」 礼司は男の肩を抑えて周りを指さした。 「あっ!」 三人は微妙に違う風景に声を上げた。 「確かに違います。あんなビル無かった。どうやったら帰れるんですか?」 「マジで帰れない」 礼司は首を横に振った。 「良いかよく聞け、お前たちのいた世界とはそっくりだが  微妙な点でずれがある。おそらくお前たちの住んでいた家もあるだろうが  そこには別な人間が住んでいるはずだ、職場に行っても学校に行っても  お前たちが働く場所、住む場所すらないんだ」 「ええ!」 「運転免許証も使えない。銀行カードもクレジットカードも使えない」 「どうしたら・・・」
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