1章 眼鬼

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栗原が驚いて弓を見上げた。 「日本の弓は世界一大きいのよ」 「他の国は?」 「日本以外の国は複合弓と言って木を合わせて小さくて強力な弓を 戦いに使っていたみたい、弓と言う字を見ればわかるでしょう」 「ああ、なるほど」 「日本ではこの大きな弓は戦いより精神的なものを追求していたみたい」 「ですよねこんな大きなもの持って戦ったら矢を放つ前に斬られてしまいますよね」 「だから、場を清めたり悪魔を祓ったりすることもあるのよ。相撲の弓取り式も土俵を清めると言う話もある(諸説あり)」 「とう事は鬼に効果あると言う訳ですか?」 「そりゃ、石ころ投げるより効果があるだろう。あはは」 礼司がそう言うと魔美は睨みつけて礼司に弓を向けた。 栗原に弓を持たせると魔美は矢筒に矢を6本背中に担ぎ、 右手に弽(ゆがけ、弓用の手袋)をして弓を持った。 「かっこいい」 栗原と礼司はセーラー服魔美の凛とした姿に引き込まれた。 「やはり、夜野さんJK好きだったんだ。変態!」 魔美は礼司を冷たい目でにらんだ。 「で、では俺も・・・」 礼司は鬼の根付をチャランと鳴らすと120cmの大刀を手に持った。 「おい、栗原。何時だ!」 「10時50分です」 「来るぞ!車の中に居ろ」 「は、はい」 弓を持った魔美と刀を持った礼司は並んで鬼に向かって立ちその後ろに 由美が座っていた。 赤い雲は高尾山を覆いつくすと完全に目玉を作っていた。 「食うって言ったって口はどこにあるんだ?引き裂く手も無いし・・・」 窓から外を見ていた栗原がぶつぶつと言った。 その目は動き高さを落とし礼司たちの正面を向いてきた。 「すみません、11時です」 栗原が窓を開けて恐々言った。 「ママ、お願い」 「はい!」 由美は勾玉に手を当てると 三人とタクシーがバリアに囲まれた。 「ゴー」 強大な目が血の色に染まり名その中心から光を放った。 バリアに囲まれているにも関わらず、 三人は飛ばされタクシーが大きく揺れた。 「キャー」 由美の座っていた車いすが倒された。 地面に転げ落ちた 「由美さん」 礼司が車いすを起こすと再び目玉が赤くなった。 由美は勾玉を右手で囲むと後ろの社殿が光りだし まぶしいほどの光線が鳥居の中を通り抜けを 眼鬼に向かって行き目玉は黒い霧で囲まれた。 「魔美、いまだ」 魔美は弓を引き目の中央に向かって矢を放ち 矢が刺さるとそこはさらに黒くなり空高く上がっていた。 「くそ!逃げた!」 魔美が弓を引いたがあきらめた。 「止めて魔美、届かないから矢が無駄になる」 魔美は由美の方を振り返った。 「はい!」 「俺の刀じゃもっと届かない」 「礼司さん九字切れる?」 「いや、もう11時だ」 「違うわよ、何言っているの」 魔美が怒って亮に弓を引いた。 「待て待て!魔美」 「礼司さん、いい?」 「はい」 礼司は由美には妙に素直だった。
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