【ミラーボール共和国】

5/7
前へ
/7ページ
次へ
思いっきりの軽蔑を込めた視線で、ようやく真面目に話す気になったのな、七詞は説明を始めた。 この国と、この国にどうして私たちが来ることになったかの説明を…。 「さて、今回調査することになった、この国の名は"ミラーボール共和国"」 事前に少し調べてきた。この国の名前でもあるミラーボールの意味を。 この会場の天井からぶら下がり、回り続ける、何枚もの鏡でできた直径3mはあるだろうあの巨大な球体のことをミラーボールというらしい。 一つの光を何枚もの鏡がそれを反射し、会場の中をまばゆく照らす。そしてミラーボールの下で人々は光を浴びながら踊り続ける。 その昔、人類は光をもたらす太陽を崇め、感謝の印として太陽の下で舞っていた時代があったと聞く、この国ではミラーボールがまるで太陽の代わりをしているようだった。 「そして、この国には2つの法律がある」 七詞は二本の指を立て、一本ずつ折りながらこの国の2つの法律を説明した。 【1】DJと言う職業の者が音楽を流している間、その音が聞こえている限り、この国の国民は踊り続けなければならない。 【2】この国で起こる全ての出来事は、それがどんなことだとしてもエンターテイメントとして楽しまなければならない。 「まぁ、外の国からやってきた俺達はこの国の法律を守る必要はないが、当然この国の国民たちはこの2つの法律を守らなければならい」 「もし破れば…」 「それは俺たちの国と一緒さ、頭に埋められたカプセルが爆発して、一瞬であの世いきってな」 この世界のすべての人々は生まれたときに脳内に小さなカプセルが埋められる。 カプセルの名は"Low Enforcement Capsule:法執行カプセル"通称「LEC」。 機械に疎い私は技術的なことはよく分らないが、簡単に言えばLECには高度なAIが組み込まれており、対象者の状況、心理状態を、脳内をめぐる電気信号であるニューロンなどから把握し、対象者が出身国の法律に背いていないかを24時間、365日、常に監視し続けている。 そしてもし、AIが法律に背いたと判断した場合、問答無用で即時、法の執行が行われる。つまりはカプセルが小さな爆発を起こし、対象者の脳を頭蓋骨ごと粉砕し、処刑する。 「LECはいつも俺たちのこと監視している。文字通りRECしているんだ。この頭ん中にそんな爆弾が仕込まれているなんて、想像するだけで…あぁ恐ろしい」 LECの誤作動は過去一度も無いとされている。でも、例えもしそうだとしても…。 「俺も子供ん時、初めてコイツのことを聞いた日の夜は、寝ている間に自分の頭が爆破するかもってビビって一睡も出来なかったもんなぁ。おまけに小便チビっちゃったし」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加