03 再会

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 辰治は吉松組の屋敷に部屋を借りて、寝起きしている。ここでは他の若い衆や、八重子たち夫婦も共に生活を送っている。  辰治と八重子と寛二の3人が鉢合わせすることも、当然ある。しかしそのたびに、部屋の中には気まずい空気が流れていた。  見たところ、八重子と寛二の仲はうまくいっていて、おしどり夫婦のようだ。その光景を見て、辛さをまったく感じないと言ったら嘘になる。  そういう空気を察しているのだろう。八重子たち夫婦は辰治を前にすると、お互いに遠慮するような態度を取りはじめる。そうなると今度は、辰治の方がその空気を察し、夫婦に対して気兼ねをしてしまう。  吉松組に帰ってからというもの、毎日がその繰り返しだった。そんな3人の様子を見て、他の者たちが気を揉んでいることも解っていた。 (体力もだいぶ回復したし、そろそろひと働きして、外に部屋を借りた方がいいのかもしれない)  そう決心した辰治は、今後のことを相談すべく、定吉親分の座敷を訪れた。  これ以上、誰かの邪魔にはなりたくなかった。 「親分。明日から、あっしにも仕事をさせてください」 「具合はもういいのか?」 「ええ。この通り、すっかり血色も良くなりました」  辰治が自分の頬をぺちんと叩いて見せると、定吉親分は「そうか」と笑った。
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