03 再会

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 言われてみれば、初めて会った時は、命からがら戦場から帰って間もなくのことだ。気が付かないのも無理はない。    辰治は照れを隠すように、鼻の下を擦った。たった半月ほど前の出来事だが、懐かしい人に出会ったようで、なんだか嬉しくもあった。 「その後、無事お宅に帰れましたか?」 「ええ、おかげさまで。その節はありがとうございました」 「いえ、いいんです。それより、またお会いするなんて、ご縁がありますね」 「どうやら、そのようだ」 「いやあ、本当に男前な方だ。髭は剃らないんですか?」 「いや、今日は剃り忘れただけで」 「へえ……」  世話ばなしに興じていると、男が急に近づいてきて、そっと辰治のあごに触れた。  あごに散らばった無精髭を、指先がちりちりと引っ掛けながらなぞっていく。  ドキッとした。反射的に、辰治は一歩身を引いた。  辰治の反応を見て、男はまた笑っている。そのいたずらめいた表情が、やけに色っぽく映った。  辰治は今更になって 「アンタは……男娼なのか」  と、ドギマギしながら呟いた。  男はそっと髪をかき上げ、気恥ずかしそうに苦笑いした。 「自分も去年の末に中国から復員したんですが、家も家族も空襲で亡くしまして。生活にもつまづいてしまって、今はこのとおりです」
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