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03 再会
暖かい布団で寝起きし、三度の食事を取る――そうやって療養生活を続けるうちに、辰治の健康状態はたちまち回復した。
戦地で病気にかかり、熱や下痢に苦しみながら帰国した戦友も多かった。辰治も腸チフスや赤痢などにかかっていれば、しばらくは食事を取ることもままならなかったのだろう。重い病のない状態で帰国できたことは、幸いだった。
拳を握る。手の甲や腕に浮いた血管。その中に、熱い血が通う。幽鬼のごときであった身体――今では毛細血管の隅々まで、活力が行き届いている。
国の配給制度は、もはや破綻しているに等しい。
配給で手に入る食べ物はわずかだ。しかし、定吉親分や組の者たちは、どこからか滋養のつく食べ物を仕入れては、辰治に分け与えてくれた。
特に寛二と八重子は熱心だった。自分達の食事を減らしてまで、辰治をいたわろうとする。まるで罪滅ぼしのように尽くし、気を遣う。そのことがむしろ、辰治にとっては心苦しかった。
そんな三人のぎこちない関係は、一家全体の困りごとになりつつもあった。
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