01 スモモの味

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 01 スモモの味

 昭和二十一年、初夏。  進藤(しんどう)辰治(たつはる)は上野駅の駅舎を出ると、青く突き抜けるような空を見上げ、目を細めた。  太平洋戦争終結から約1年が経とうとしている。  終戦の知らせを受けた時、辰治は陸軍一等兵として、赤道直下に位置する小さな島にいた。  復員船が島にやってきたのは、今から半月ほど前のことだ。10日以上も波に揺られ、和歌山県の港で船を降りると、今度はひたすら復員列車に揺られ続けた。  満身創痍の体を引きずって、今――辰治はようやく、懐かしき東京の大地を踏みしめている。 (……やっと帰ってきたんだ)  そう思った途端に、ふらりと体の力が抜けた。  おぼつかない足取りで雑踏の中をすり抜ける。駅舎の壁にぶつかるようにもたれ掛かると、そのままぐったりと(こうべ)を垂れて、目を閉じた。
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