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20%の愛と30%の愛
風がカーテンの端の二人の体を穏やかに隠す。
指を何度も絡ませ緩く握り優しく寄り添いお互いの唇を合わせる。
「柔らかいね」
「ううん。温かいよ」
夜の橋の上、私は少し大股でスタスタと歩く。私の後ろを彼が続き、私が足を止めると彼も足を止めた。少しイラついて私は振り返る。
「ねえ、別に私じゃなくてもよかったよね?たまたま私が告白したから仕方なく付き合ったんじゃないの?」
「そんな誰でもいいって言い方はよくないよ」
「だって本当の事じゃない!」
私は思わず声が大きくなる。
「信じらんない!普通、教室でやる?やってるの見たからこうなっている訳だけど!しかもイケメン二人で何かズルいし」
「いや、イケメンて」
「聞いているの?」
「聞いています。もちろん」
「何なのあれ?何であんなに幸せそうなの?偶然見ちゃった私が悪者みたいよ」
私は彼に詰め寄り、
「ねえ、抱きしめてよ。それとも女の子は触れないの?」
向こうはためらいながらもそろそろと手を伸ばし、優しく私を抱きしめた。
「女の子抱きしめられるんだ」
「少し、がんばればね」
ふう。と私はため息をつく。
「男20%。女30%。なんだかわかる?」
「さあ?」
「成人の体脂肪よ。女性の方が10%多いわ。当たり前よ柔らかいもの。でもあなたは30%のあたしより20%の彼の方が大事だったわけ」
「交際相手を体脂肪で選ばないよ」
「当たり前よ。選ばれたらたまらないわ。ムカつくのはさあ、だまされた訳じゃなくて」
「だましてなんか」
「うるさい!」
私は彼の声を遮った。
「なんであんなに幸せな顔なのよう。もう本当に二人の世界だったの。何もいらないって空気」
彼の腕の中で諦めきった声しか出てこなかった。
彼が言葉を選びながらのように静かに語りかけてきた。
「だって何もいらないから。例えば君とだったら親に紹介するのは、何のためらいもないし、障害もない、結婚もできる」
「でも彼の紹介はせいぜい大学の友人。君との未来より障害が多いし、苦労もする、きっとツライことも多い。でも、いつかは俺、俺たちは必ず障害を超えたい。いや超えるよ」
私、誰かと付き合ってこんなこと言われたことあったかしら。障害なんてしり込みするわ。そうよね、二人ともかっこいいし、女の子と付き合っていれば普通なのに。どうして女の子じゃないの?どうして私じゃいけないの?
「俺の人生だから嘘ついてごまかして生きていきたくないんだ」
「あんたが私にフラレたんだからね」
「え?」
彼が私の顔を覗き込んできた。
「え?じゃないわよ。私があなたをフッタの。あんまりにもヘタレだから。そう言ってしばらく女の子がよりつかないように悪口を言いふらしてやるわ」
「うん。ありがとう」
彼は小さくはにかんで見せた。
「ありがとうじゃないわよ。まだフラレた元カノを家まで送る最後の仕事が残っているんだからね」
「はい。わかりました」
私たちは目を合わせるとお互い声をかけることもなく静かに手をつないで何事もなかったように歩き始めた。
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