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なんで1人旅よ?
旅立つ前にみんなに聞かれたんだけど、そんときはまぁ、ラクダに会いたいから、くらいの思いしかなかったんだけど。
砂漠を超えてはるばると。
手持ちのお金も無くなって、空腹にまけて入ったぼろい食堂で運命が待っていた。
今ならわかる。
あなたに会うためにここに来た。
わたしの目の前に座る彫りの深い顔立ちの彼。真剣な顔でじっとわたしを見つめる大きな瞳は深いブラウン。そこにはらりとかかる巻き毛がセクシー。
話す言葉がフランス語っていうのがいい。
わたしに向けて色々語りかけてくれるんだけど、英語もギリギリなわたしにはわかるわけない。けど、彼の熱い思いだけは伝わる。
あぁぁ
とうとう手握られちゃったよぉ
わたしをにがさすまいとする真剣な眼差しと強い力。
どうする、どうするわたし?
こんな風に熱い思いぶつけられたことなんてない!!もう日本に帰れない!!!
ただ問題はうしろのおっさん。
ここのオーナー。
ずっと私たちにはりついて喋ってる。
やだ嫉妬?でも彼を引き合わせてくれたのはこのおっさんだから邪険にもできない。未来の親戚かもしれないし、とりあえず愛想笑いはしておこう。
だけどお願い。
ちょっとでいいから2人きりにしてくれる?
そう思いつつ微笑むわたしを応援するようにおっさんはすごい勢いで喋り出す。
何言ってるのかわからないけどありがとう。
「あんた、反省したの!? おまわりさん、あんたをたいほするて言ってるよ?お金ないのに食べちゃダメ!!カード使えないて書いてあるよ。何ヘラヘラしてんの!?おまわりさんさん、この子ちゃんと反省するまで逃がさないで!!」
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