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「此所に置く以上、それしか道はねぇ。お前には賄い方兼通詞役として働いてもらう」 「でも…」 「市波に他に組の役に立つ事が出来るか?」 あるなら言ってみろと土方が凄んだ。 萠は天井を見上げ打開策を模索する。 刀を振るう以外に新撰組の役に立つ事… 新撰組に足りないもの… ふと、天井の隅の蜘蛛の巣が目に止まった。 「土方さん、市波さんと話をさせて下さい」 「わかった。但し飯を食ってからだ」 そう言い終わらない内に障子が開き、総司が膳を片手に入ってくる。 「土方さん、入りますよ」 「総司、何度言えばわかるんだ? せめて入る前に言え」 突っ込み所満載過ぎて呆然と二人を見る萠。総司は部屋の隅に置いてあった土方が使っているだろう布団を持ち出すと、萠を起き上がらせて、背にあてた。 「此れで少しは楽でしょう? さっ食べますよ」 当然のように萠の横に座り椀を手にする。どう見ても食べさせるき満々の様子に、萠の顔が引きつる。 「沖田さん? 自分で食べられますよ」 「何を言ってるんですか、また傷が開いたら大変でしょう?」 そう言われると反論のしようがなくなり、口を開けるしかない萠。 「沖田さん、楽しんでますよね?」 ニッコリ微笑むだけで、何も答えず匙を突き出す。 「榊、諦めろ。どうやら気に入られたらしいぞ」 土方の言葉に頭が痛くなる萠だった。 何とか重湯を食べ終えると、土方が総司に市波を連れてくるように言う。 膳を持ち出ていった総司の声が直ぐ側から聞こえた。 「市波さん、土方さんの部屋に行って下さい」 バタバタと音がすると、 「市波です」 の声と同時に障子が開く。 「お前もか、返事を待ってから開けやがれ」 土方の怒声を完全に無視して、萠に駆け寄る市波。そんな市波の様子に、土方への怒りが未だ収まってない事を感じ、萠が言う。 「市波さん、土方さんはちゃんと謝ってくれたよ。それにあれは私も悪いの。だからそういう態度は止めて」
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