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愛想よく口元を微かに引き上げて体を杉本の方へ向けようとした刹那、左脇腹を強烈な痛みが襲った。
「杉本様…?」
刺されたと認識する前に、再度自身に迫る鈍い輝きを放つ金属が視界に入った。
「何するんだ!」
強い力で右肩を引かれたと思うと黒い影が萌を覆う。くぐもった呻きが聞こえたかと思うと、杉本の半狂乱の叫び声が聞こえた。
「その女も玄邦も悪いのよ!」
走り去るヒールの音と通りかかった通行人の慌てた怒鳴り声が聞こえる。
止血しようと左脇腹を抑える玄邦が滲んで見え、遠くにパトカーのサイレンが聞こえたところで、完全に意識が闇に落ちた。
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