十一

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土方は少しでも癒してやりたい思いで布団に入り萠を抱え込んだ。そうしてやれば縋るように萠の手が力なく土方の胸元を掴む。 「大丈夫だ。大丈夫、俺がいる…」 言い聞かせるように繰り返し、ゆるゆると萠の背中を撫でる。暫くそうして居ると落ち着いた萠の寝息が胸元から聞こえて来る。その寝息に誘われるように土方の意識も緩やかに暗転していった。 昼七つを過ぎた頃、心地よい温もりと緩やかな圧迫感を感じながら、萠はゆっくりと目を覚ました。 未だ少し重い瞼を開けば、目前に黒い着流しのはだけた滑らかな胸板が霞んで見えた。 土方副長…? ぼんやりとする頭が少しずつ状況を認識すると、気恥ずかしさに体温が上がり身動ぎする。その僅かな動きを察知したかのように、萠の体に緩く回された腕に引き寄せられた。 「起きたか?」 掠れた低く甘い声が密着した肌から響く。 「はい…」 返事を返しても萠を拘束する腕の力は緩まない。その事に何故だか安心を覚え、頬を摺り寄せる。 「今何時でしょう?」 「申一つくらいだ。二刻程寝ていたな。少しはすっきりしたか?」 「はい」 土方は少し腕の力を緩めて萠の顔を覗き込む。その目が酷く温かで、喉元に言葉にできない思いが込みあげる。
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