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さあ、どうする? と威圧感を纏う市波に土方から苦笑いが溢れた。
「惚れた女を守る番犬ってとこか。それなら俺は仲間を守る狼だ」
「仲間ですか…」
市波はくしゃりと顔を一瞬歪めると、不服そうな視線を土方に向ける。
「此処には俺と土方さんしか居ませんよ。此処での話を誰にするつもりも無い。あんたの立場も解ってる。腹割って話せねぇかな?」
苛立つように市波の言葉遣いが崩れる。それと呼応するように威圧感が増す。
土方はそんな市波を見ながら、もし目の前の男が己たちの時代に生れ落ちていたなら、決して対峙したくない剣客になって居ただろうと思った。
「ハッ、同族嫌悪みてぇだな。ああ、俺も榊に惚れてるよ。だから何があってもあいつの悪いようにはしねぇ。絶対に守り通してやるよ」
土方の答えに満足したのか市波の鋭かった視線が和らぐ。
「気付いてると思うけど、萠は今、土方さんたちの行く末で悩んでます。いや、悩むと言うより絶望してるの方があってるかな?」
「絶望?」
余りにも強い表現に土方が眉を寄せた。
「俺は土方さんたちの先の事は詳しく知らないですけど。萠は此処の人たちを少しでも生かしたいと思ってます。
でもそれが出来ないんじゃ無いかって苦しんでるんです」
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