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「何を笑ってやがる」 土方が不機嫌そうに凄む。 「えっ、自覚あるんだと思って…」 「なっ!」 そんな二人を見て、山南が声を出して笑いだした。 「山南さんまで…」 土方がぼやく。 「いやいや、愉快ですね。土方君にこんな事を言える女子は榊君くらいですよ」 「そうですか? 私には山南さんの方が怖いです。土方さんは鬼の副長なんて言われてますど、鬼の皮を被った仏で、山南さんは、仏の皮を被った鬼に見えますよ。」 一瞬笑いやんだ山南だったが、前以上に笑いだした。 「本当に愉快だ。こんなにもあっさりと見破る女子が居るとは。そうですよ。鬼で在るが故に仏の振りをするんです。」 「でも、鬼も仏の皮を被れば仏です。」 「いや、こんなに笑ったのは久しぶりです。榊君は実に愉快だ。気に入りました。此れから宜しくお願いしますね。」 「此方こそお願いします。」 呆然と山南と萠のやり取りを聞いていた市波。そして土方はこんなにも女相手に笑う、山南を見るのは長い付き合いの中でも初めてで、それに驚いていた。 「すみません。少し疲れました。」 萠が言うと、山南は細かい話はこの次にと言って、浜崎邸へと出掛けて行った。そして市波も部屋へと戻った。 「なぁ、榊。山南さんの何が怖いんだ?」 布団に横になった萠に土方が聞いた。 「うーん、山南さんは自分にも他人にもとても厳しいと思う。酷な事だとわかっていても、必要と思えば迷わず地獄だろうと突き落とす人かなって。 それは多分、山南さん自身にも言える事で、何かあれば自らも地獄に飛び込むんだと思う。全く逃げのない人だから、凄く怖い。」 それだけ言うと萠は眠ってしまった。そんな萠を土方が温かい目で見ていた。
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