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ブチブチと不満を垂れる萠に土方が言う。
「お前、着物は仕立てられるか?」
萠はぎょっとすると、
「無理ですよ。着流しさえ着れなかったの知ってるでしょう」
「だよな」
すると山南が
「あー、そう言う事でしたか。確かにこのままでは人前には出られませんね。」
そう言って立ち上がると、何処かへ行ってしまう。しかし直ぐに沢山の晒しと傘を手に持ち戻って来た。
「榊君、出掛けますよ。ちょっと襦袢になって下さい。」
戸惑う萠の帯に手をかけると、山南は一思いに抜き取る。稽古をしていた斎藤が呆然と見ていた。
「おい、山南さん。いくらなんでも部屋の中でやれよ」
夢中になると周りが見えなくなる山南。
「これは、すみません」
「いえ、別に裸になったわけではないので… でも、安心しました。山南さんにもこんな一面があったんですね」
「面目無い」
謝りながらもスルスルと晒しを萠の体に巻き付けて行く。
「はい、終わりました。」
肩から腰まで直線になるように、何重にも巻かれた晒し。腕すらも真っ直ぐに降りない程だった。
それはまるで肉襦袢のようで、萠はケタケタと笑い出す。
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